山形市の老舗百貨店「大沼」の自己破産に思う

1月27日に山形市の百貨店大沼が自己破産申請して倒産した。
このニュースを見て、次の3点が気になった。

①従業員への1月分給与、退職金支払いの目途が立たない。
②友の会積立金の返還の目途が立たない。
③受注済みのランドセル、学生服の引渡しにの可否ついては、管財人に委ねる。

大沼の経営悪化は周知で、山形市長までが大沼の再生のために市民に買い支えを呼び掛けていた。この冬は山形県内は降雪が少なく、売上も想定外に大幅ダウンしたのだろう。それにしても、もう少し早い段階で民事再生法を申請するなど、従業員や、協力してくれた市民を裏切らないで済む方法はなかったのだろうか?

大沼の本店は山形市の中心市街地にある。郊外にはイオンの大型店が2店、天童市にも大きなイオンモールが出来、消費の中心が完全に郊外に移転した。山形駅からも徒歩では10分位かかる。

致命的だったのは、山形高速道が出来、仙台と1時間以内で行き来ができるようになったことだと思う。その前は、仙台に行くには、天童方面から関山峠を越えて行かなくてはならなかった。2時間位はかかった。
おまけに、今は高速バスが10分~15分おきに出ている(朝は5分間隔)。自分が何年か前に乗った時は、仙台から山形へ通学している高校生が複数乗っていた。
高額品を買うのならば、尚更仙台に行ってしまうのではないだろうか?

大沼の長澤社長が2019年6月に再度代表取締役に就いた時の山形新聞の記事に次のような発言が載っている。

 長沢氏は「長くブランドを入れ替えず、お客さまが食傷を来している感じがある」と述べ、ブ ランド入れ替えの必要性を指摘。第三者割当増資の実行後、アパレル、化粧品、宝石など県内に はないブランドを誘致する考えを示した。再建について、永瀬氏は「挑戦しなければ売り上げは さらに落ち込む。全役職員が一丸となり、全力で再建に取り組む」と述べた。

(山形新聞 2019年6月13日付記事)

平時であれば正論なのかもしれない。しかし既に経営悪化が明確な時期にこのような発言をすれば、今まで協力してきた取引先の信頼を失うし、新規ブランドの誘致は、山形市の立地では、絵に描いた餅に終わる確率が高い。

このように後付けで批判するのは簡単なので、自分だったらどうするかを考えて見た。
①お客様、従業員、取引先からの話を丁寧に聞いて、資金がなくても出来ることは即実行する。
 特に、簡単に出来ることから始める。
②百貨店の顔である外商を強化する。
③中心市街地の市民ニーズに対応した売場を作る。
 例えばデパ地下ニーズはあると思うので、1階も食品売場とする。
 近隣商店街では不足する業種を探して入店して貰う。

これで、倒産を免れられたかはわからない。
しかし、自分も行ってみて感じたのだが、客が少ない百貨店ほど、入りにくい場所はない。売上を上げるためには、入店客を増やす試みが一番大事だったのではないだろうか?

(追記)1月28日 15時
1階を食品売場にするには、全体のテナント移動が必要になるので、相当の設備投資が必要になるし、テナントの協力が得られるかもわからない怖さがある。資金の調達余力があるうちに実行しないと出来ないだろう。