新型コロナ対応に見る事務処理軽視のツケ
今から約40年前、銀行に新入行員として入社して5年目に、当時事務部と呼ばれていた情報システム部門に配属され、全く素養のないコンピーュータ言語の勉強をさせられた。当時の自分は「?」と思っていたが、今では大変感謝している。
現在の民間企業にとっては、情報システム部門は大事なセクションで、経営幹部になるためのキャリアパスになっていると言っても過言ではないだろう。
最近の新型コロナの対応を見ていて、そのような認識が未だに全く欠けている機関があることを思い知った。それは政治家と官僚である。
例えば、マイナンバーカードによる特別定額給付金の申請。インプットデータのチェックをしていないシステムを民間で作ったら、良くて即「始末書」だろう。
制度設計をする際に、事務処理と合わせて考える、これは民間では当たり前のことである。
しかし、政治家と官僚は違うらしい。制度設計をすれば、事務処理はついてくると思っているらしい。政治家も官僚も情報リテラシーを身に付けることが必要だし、直ぐには出来ないなら、政策決定に際し、そのような人を入れて一緒に考えるべきだろう。
「GO TO トラベル」にしても(その是非はさておき)、制度設計という概念がないまま進めている。旅行業界の方々の苦労は如何ほどかと思う。制度設計が固まらないのに、当初通りのスケジュールで始めるという発想には呆れかえるばかりだ。
外部委託が問題にされている「持続化給付金」は、民間委託だからか、システム自体は、細部では問題はあるが、他の施策に較べれば、まだましだろう。但し再委託を重ねているので、マニュアル通りでない申請への対応が、上手く回っていないのだと思う。
7月14日から申請が開始された「家賃支援給付金」は、賃貸借契約書や支払証憑をすべてPDF(10MBまで)で添付するようになっている。大部の賃貸契約書や支払証憑を、各1ファイルのPDFにするのは大変だ。サンプルにあるようなA4判1枚の賃貸借契約書など、実際にあるのだろうか? 現実を知らない人が頭で作っているのだろう。
パソコンを利用しない政治家がIT政策担当の大臣に任命される。このような悪い冗談はやめて欲しい。情報リテラシーがない人は、官僚も政治家も務まらない、そういう時代になっているのだ。
(追記)
7月18日(土)の朝日新聞/朝刊に、東京都のコロナ陽性者の公表数が、陽性確認後から概ね3日後のものとの記事が載っていて唖然とした。依然として報告はFAXというのも驚いた。今の世の中、システムを作れば、翌日朝一番に発表すること、必要なテータ分析をシステムですることは可能だろう。
基本的なデータ集計さえ出来ない中で、最善の政策など考えられる筈がない。報道機関も問題点を把握して、提案する姿勢が必要だろう。