東邦レマック㈱の経営戦略

東邦レマック㈱の2020年12月期第2四半期決算短信を見ていて、財務体質が強固な会社は幸せだなと、心底感じた。売上高が前年比で3割低下し、84百万円の赤字を出しても、財務体質は盤石でびくともしない。小売業と違って不稼働資産となる店舗設備等も殆どないので、減損のリスクも少ない。

決算短信の中に「レマック リバイバルプラン」が記載されているが、いずれも「業務の改善」である。3期連続で営業損失を出していれば、従来の延長線上では生きていけないとして、新分野にチャレンジするものだが、財務体質が良いので、その必要がないのである。

(レマックリバイバルプラン)2020年7月22日「2020年12月期 第2四半期決算短信」9頁
a.ライフスタイルのカジュアル化やファッションのダイバーシティ化に対応するオリジナルブランドの絞り込みと強化を行う
b.受発注システムを刷新し、物流の構造改革を推進し、商品回転率の向上と物流コストの削減を行う
c.品質管理体制の見直しを行い、さらにローカル化することで精度の向上と効率化を図る
d.働き方改革による一人当たりの生産性向上のために異業種へのアプローチを強化し、新たな市場の創造・開拓などへ管理職を始めとする全社員の意識改革を行う        

確かに、市場の縮小が予想される紳士服業界では、青山商事㈱はカジュアル事業(アメリカン・イーグル事業)や総合リペアサービス事業(ミスター・ミニット)に進出したものの大きな痛手を被ったし、㈱コナカはサマンサタバサを子会社にしたが、その効果は見通せない。
動いて損をだすのならば、動かない方が良い、というのは現実的選択で、今の所は正解である。

ただ、リバイバルプランを実現しても売上増加は期待しにくいし、コスト削減・効率化で収益体質を取り戻せるかは疑問である。
昨年の8月に㈱タケヤが民事再生法を申請した時に、東邦レマックがスポンサーに手を上げるのではないかという噂が流れた。確かにタケヤの店舗と東邦レマックの商品は相性が良いので、将来を見越して小売に進出するのは一つの選択だと思った。
しかし、東邦レマックはスポンサー候補となる意向表明はしなかった。既存取引先との関係を気にしたのかもしれないが……

株式上場している以上、株主からは成長戦略を求められる。
JASDAQの上場廃止基準に次のようなものがある。

最近4連結会計年度における営業利益及び営業活動によるキャッシュ・フローの額が負である場合において、1年以内に営業利益又は営業活動によるキャッシュ・フローの額が負でなくならないとき。

東邦レマックは、2020年12月期業績予想で営業利益を△274百万円としており、営業利益の額は4期連続で「負」になるので、営業利益の上場廃止基準には抵触してくる。但し、2019年12月期の営業活動によるキャッシュフローが、売上債権の減少でプラスになっているので、上場廃止基準には抵触しない。

現在の東邦レマックの株価は2,415円(7/22 終値)である。一方、第2四半期決算(6月20日)の純資産49億67百万円を、発行済株式数512,070株で割った1株当りの純資産は9,700円である。現在の株価は、純資産の25%にも満たない。

同族の持株比率が高いため、株価を低位に安定させることも、それなりの合理性があるのかもしれない。しかし、赤字に馴れてしまった会社を、利益体質に戻すのは容易なことではない。
今後も上場を継続していきたいのであれば、早急に2021年12月期の営業利益の黒字化に向けて経営戦略を再構築し、実行していく必要があるように思う。