データとオンライン会議ではわからないこと

新型コロナの影響で、外出を抑制している方々も多いのではないだろうか。
その場合、売上状況はコンピュータで管理しているのだからデータを見ればわかるし、大事なお取引先とはオンライン会議でコミュニケーションが出来るので、慣れれば問題はない、というのが一般のマスコミ論調だと思う。

確かに、なかなか二人だけで話すことがないトップ同士がSkypeなどを利用して直接コミュニケーションを取ることは有効だ。普段は部下もいて本音の話ができないならば尚更だ。

しかし、現地を見て判断しないと間違えることがあるように思う。
近所にあるスーパーの一つが改装した。売上も順調そうだし何を変えるのかと思ったら、店名を変え、品揃えを変え、平均単価を下げてグレードを落とした。
近隣の、自分がよく利用するスーパーは、グレードが高い順に、「クイーンズ伊勢丹→当店→ライフ→西友」だった。今回の改装により、グレード感はライフ並みとなり、同店との競合度合いが強くなった。

実は、自分は当店をあまり利用しなかった。理由は単純でレジ待ちの行列が長いからである。
当店は、最寄駅の高架下にある。立地は一番で、特に通勤客の帰宅帰りは強く、行列が蜿蜒と続いた。それでも全部のレジを開けているのは開店セールの時しか見たことがなかった。

以下は推測だが、ある時期(多分店長が変わった時)から、価格の打ち出しが強くなった。価格を安く見せれば、お客が増えて、売上が増えて、利益も出ると考えたのだろう。しかし、逆に売上が落ちてしまった。それで、店長は方向性は変えず、店名と品揃えを変えてグレードを落とせば売上が増えると考え、本部に具申した。(今までそういうやり方で成功してきた方だったのだろう)
本部は現地に何度も足を運んで考えることをせずに、データだけを見て、オンライン会議で承認した。

この店が繁盛していたのは、利用する人にマッチしたグレード感と利便性だったと思う。
クイーンズ伊勢丹はちょっと高いけれど、帰り道に通るライフや西友よりちょっと良いものもある。そして駅の改札を抜ければ、雨の日でも傘をささずに買い物ができる。
沿線の情報誌によれば、この地域は沿線の中では賃貸物件の賃料が高い。そういう中でグレードを下げるという選択肢は不思議だった。

案の定というか、最近はレジ待ちの行列がほとんどなくなった。自分は便利になったが、一方で、今まで買っていたものが置いていないので、買いたいものもなくなった。
売上は大幅にダウンしていると思う。結果、ライフのお客様が増えているように見える。

本部の人が、データだけで考えずに、現地を何度か見れば、必要な対策に気が付いたのではないか? 
売上増の一番の対策は、グレードを下げることではなく、買物客が多い時間帯にレジの稼働台数を多くすることだったのだから。そして、グレードを下げる戦略の危険性にも。